white minds

第四十章 全ては愛故に‐6

 見慣れた時計をいつものように見上げてから、よつきは窓の外を眺めた。曇り硝子の隙間からでもかすかにわかる。先日降った雪で白に覆われた大地に、また粉雪がふわふわと舞い降りていた。
「寒そうですねえ」
 そうつぶやく彼は暖かい基地の食堂にいる。外の景色をもう一度一瞥すると、彼はゆっくり厨房へと向かった。また慣れた仕草で紅茶を入れればふんわりといい香りが漂ってくる。どことなく花を思わせるやや甘めの香りだ。本当は贅沢などできないのだが今回ばかりはいいだろう。この寒さの中帰ってくる者たちのことを思えば、ちょっとしたプレゼントだ。
「ただいまー」
 すると声は、扉が開くと同時に聞こえてきた。厨房から顔を覗かせれば、コートを着たまま食堂へと入ってくるリンの姿が見える。その後ろには濡れた髪を困ったように見つめるジュリが続いていた。二人とも寒さのためか頬が赤いし、手を摺り合わせている。やはり外の気温はかなり低いのだろう。よつきは二人へと笑顔を向けた。
「お帰りなさい、紅茶入ってますよ」
「やったー! さっすがよつき。手がかじかんで大変だったのよね。思ったより寒くてさ」
「雪降ってますしね」
 微笑みながら紅茶を注いだカップを、彼は食堂のテーブルへと運んだ。小走りでやってきたリンはコートを脱ぐことなく、すぐさまカップを一つ手に取る。嬉しそうにするリンを横目に、彼はジュリへと声をかけた。
「ジュリもどうです?」
「紅茶って、今高いですよね」
「そんなこと気にしないでください。これはこの間アキセと一緒にアールの復興手伝ってきた、そのお礼なんですから」
「でも」
「入れたのは戻せないんですから飲んでください。いいですね?」
 よつきは半ば強制的ににカップを取るとジュリへと笑顔で押しつけた。困ったように微笑んだ彼女は、それでも素直にそれを受け取る。そしてその縁に震える唇を押しつけた。そんな彼女の様子を彼はじっと見守る。
 リンもそうだがジュリも、以前見慣れた様子とはほんの少し違った。事情を知らない者には単なる外見的な変化だと映っただろう。だがそれがスピルとスェイブの名残なのだと、彼は知っていた。傍目には髪の長さくらいしか変わらないが、他にもほんの少し違う部分がある。世界を見る目や人間を見る目が、昔の彼女たちと違う。全く異質な世界を見てきた者の持つ、どこか達観した色を帯びていた。
「美味しいですね」
「本当美味しい! 最近よつき家事上手くなったんじゃない?」
「そうですねえ、基地で待ってることが多いせいでしょうか」
 顔をほころばせる二人へとよつきは苦笑を向けた。褒められてるのに寂しい気持ちになるのは、自分が役に立っている気がしないからであろう。本当なら彼だってもっとあちこちで働きたいのだ。けれども呼ばれることが少ないだけで。
「で、結局リン先輩はウィンの長に決まったんですか?」
「一応ね、仕方なく。この混乱の中で事態理解してる人って少ないからねえ。まあいつまでこのシステムが続くのかわからないけど。ほら、ジュリたちも手伝ってくれるみたいだし、大丈夫かなって」
 コートを脱ぐジュリを横目に問いかければ、手近な椅子に腰掛けてリンはうなずいた。そうですか、とよつきは答えて自身も適当な椅子に座る。軋んだ木が悲鳴を上げた。
 神魔世界から、ほとんどの世界から技が消えて、もう三ヶ月以上過ぎていた。
 予想通り技を奪われた神も魔族も、戦闘を……いや、思考その物を停止してしまった。彼らにとってはそれは両手両足をもがれたも等しかったからだ。何が起こったのかわからないというのが本音だろう。混乱の次は半ば狂気にも似た状態が、一時は周囲を騒然とさせた。
 だがその場を収めたのはアルティードとシリウス、ジーンのもう一つの姿である七つ子たちだった。彼らの必死の呼びかけでかろうじて、皆が正気へと返った。しかし問題はそれだけでは収まらない。途方に暮れた神や魔族は戦う気もなくしたが、生きる気力もほぼ同時になくしてしまった。燃え尽きた、に近いだろう。そんな彼らの今後をどうするかも悩ましいし、何より技を前提として成り立っていた世界の混乱をどう収めるかも難しかった。
「とりあえず生活が安定するまでは必要ですから。まあリン先輩なら心配なさそうですね」
 よつきはそう答えて微笑んだ。椅子を引いて勧めれば、カップを手にしたままジュリも席につく。
「しばらく技による移動も一般人はできなくなってたから、意外に地球は大丈夫なのよ。食料も自給自足だしね。当分アルティードさんが今まで通りの働きをしていてくれれば大きな問題は起こらないわ。その間に今後を考えていけばいいし」
 リンはカップをテーブルに置くとにっこり笑った。頼もしい発言によつきも頬をゆるませ、それなら安心です、と満足そうに言う。
 そう、地球の問題は少なかった。もともと他の星とは隔絶された環境だったため、技がなくなってもすぐ飢えるだのという心配はなかった。変化と言えばそれまで空間の歪みのせいで入れなかった場所へ、徐々にだが立ち入れるようになってきているぐらいだ。大量に残った魔族や神は、また別の問題だろう。
「問題は、宇宙ですよね」
 ジュリがぽつりとつぶやいた。よつきとリンは彼女へ視線をやり、複雑そうにうなずく。
 技使いの少ない宇宙はどちらかといえば技を前提とした設備も少なく、その点では地球より問題ないはずだった。移動手段である宇宙船も遠い星との行き来には精神を利用するものもあったが、普段物資の輸送に使っている物はそれとは別だ。
 だが問題なのは、残された魔族だった。地球への総攻撃に参加した魔族はジーンたちのおかげで落ち着いている。が、宇宙に残された魔族はいまだに事態を理解していない。彼らの中には狂気に陥り、周りに危害を加える者も多かった。突然技を失った技使いも似たようなもので、宇宙はさらに荒れているという。
 ため息をつきながら、よつきはカップをテーブルへと置いた。だが気落ちしている場合ではないと、話題を変えるべく口を開く。
「そう言えばリン先輩、シン先輩はどうしたんですか?」
「え、シン? シンなら今滝先輩や陸と一緒にヤマトに行ってるけど」
「ああ、そっちの方に行ってたんですか。てっきり一緒かと」
「シンが今ウィンの長に会っても仕方ないでしょう?」
 するとその意図に気がついたのか、軽やかな声でリンは答えた。置いたままのカップの縁を指でなぞって、ふふふっと声をもらして笑う。
「きっと滝先輩も長押しつけられてるわよー。絶対、これ賭けてもいいわね」
「ずるいですリン先輩、それじゃあ賭になりません」
 眉根を寄せてよつきは文句を言った。元若長が混乱の事情を知っているなら、これ以上適任者はいない。そして滝が頼まれて断れないことも彼らは知っていた。まず間違いなく長になっていると言い切っていい。だからリンはなおも笑いながら、そうね、と答えた。
 すると突然勢いよく扉が開いて、彼はどきりとした。ここに来る者は皆知り合いだとわかっているのに、それでも鼓動が跳ねる。
 今までは気を頼りにしていたからだ。近づいてくる気配を無意識に捉えていたから、こんな風に驚かされることはなかった。だが当たり前だったものが今は存在しないのだ。それ故ちょっとしたことにも大げさに反応してしまう。
「レーナさん?」
 それでもできるだけ平静さを装って、彼は立ち上がった。扉を片手で押し開けて顔を覗かせたのはレーナだった。彼女は昔と変わらない容姿で、昔と変わらない笑顔で、凛として立っている。そんな些細なことがやけに嬉しくて彼は微笑んだ。
「レーナさんがこっちに来るなんて珍しいですね。宇宙の方はもう終わったんですか?」
「いや、まだ途中だ。だがオリジナルと約束しててな、それで戻ってきた」
 若干疲れた様子の彼女に、彼は余っていたもう一つのカップを手渡した。彼女は一瞬驚いたように目を丸くしてから、嬉しそうに口角を上げる。
「嬉しいな、疲れてたんだ。紅茶なんて久しぶりだなあ」
「でしょう? レーナさん飛び回ってますもんね」
 そっとカップへ口を付ける彼女を彼は見つめた。アースがいないのはおそらく別の用事を言いつけてきているのだろう。忙しい彼女のためなら彼は嫌々でも働いてくれた。だがそれでも、彼女はこの世界で最も多忙だ。
 ホワイトはあの時、期待された通りに微妙な力の制御を行ってみせた。混沌の力は誰の命を奪うこともなく、ただその内にある力だけを取り除いた。だが精神が消えたわけでもなく、技その物が消えたわけでもない。消えたのは精神を利用して技を発動させる能力だけだ。
 しかし、その影響を逃れてしまった者が五人だけいた。
『きっとリティの力とグレイスの力、つまり中途半端な力の相互作用によるものだな。ホワイトは本当に微妙な力加減をしたが、それがわれの未熟な力を奪いきれなかったんだ。あまりに複雑に絡み合っていたから、ほぐしきれなかったんだ』
 その原因をレーナはそう説明した。そう、誰もが技という力を失う中で、彼女たちビート軍団だけが力を失わなかった。彼女たちだけが、古き鎖の一端に絡め取られてしまった。
「まあわれが飛び回るのは仕方ない。転移できるのもさせられるのもわれだけだしな」
 カップを手にしたまま彼女はもう一度笑った。春に咲く花を思わせるような、温かい笑顔だ。
 技を使うという力は失われても技自体は消滅していなかったので、宇宙のあちこちには結界やら封印やらが残されたままだった。それを彼女は一つずつ解いて周り、そこへ説明係として魔族や神を連れていった。まずは地球にあるリシヤの封印結界、次は魔族界にあるホワイトやリティによる封印結界。そうやって飛び回る彼女は目が回りそうなくらい多忙だった。戦いが終わったのに何も変わらないとアースがぼやく程に。
「でも忙しくても幸せだからいい」
 それなのに彼女はそう言って笑うのだ。その度にアースが微妙に苦い顔をしているのを、よつきはよく見かけている。
「そうよねー、アースと一緒だもんね。って今アースは?」
「別の用事。青葉がどこか行ってるから連れ戻してきてくれる予定なんだ」
 そこでリンが悪戯っぽく尋ねると、レーナは彼女へと顔を向けて人差し指を軽く振った。それにあわせて頭の上で束ねた髪が軽やかに跳ねる。額に巻いたはちまきの端も軽く揺れた。
 転移が使えなくとも空は飛べるので、少なくとも地球でのアースたちの役目は大きかった。今もネオンやカイキはあちこち使いに出ているし、イレイでさえ頼まれれば物資運びの手伝いをする。
 同じであるはずの関係の微妙な変化。それがよつきにとってはほんの少しだけ寂しかった。紆余曲折を経ながらもとりあえず皆の同化が完了し、それまで通りになったはずなのに。それなのにやはり前とはどこか違って胸の奥がちくりと傷む。仕方のないことではあるが。
「あ、そう言えばねージュリ」
「はい、どうかしたんですか?」
「ようやくあけり、仲直りしたみたいよ」
「仲直り?」
 するとリンが思い出したように手を打って、ジュリの袖を掴んだ。そろそろ暖まってきたのかごそごそコートを脱ぎながら、リンはえーとね、と言葉を選ぶ。
「バランスの皆さんと」
「バランス……ああ、コイカさんたちとのことですか。私よく知らないんですけどなんかぎくしゃくしてたみたいですよね」
「うん、やっぱり神と人間ってところに壁があったのよね、きっと。まあ技使えなくなればそんなこと気にしなくなるけど」
 妹を案じていた姉のように心底ほっとした顔で、リンはちらりと外を見た。まだしんしんと降り続く雪は止む気配がなく、さらに雪が積もることを予感させる。
「そうですか、あけりさんもユキヤさんもよかったですね」
「そうよねー、うーん若いってやっぱりそういうぶつかり合いがあってこそよね」
 二人の会話を聞きながらよつきはまたぼんやりと外を見た。神技隊らもそれぞれ事情を知る者として、あちこち忙しく走り回っている。だがその中でも少しずつ平穏が戻ってきているようだった。それぞれがそれぞれに、関係を修復してきている。
「よつき?」
 しかし突然名前を呼ばれ、彼ははっとした。声の方へと顔を向ければ、心配そうにレーナが見つめてきている。
「何ですか? あ、ひょっとしてわたくしの顔に何かついてますか?」
「顔についてるんじゃなくて浮かない顔なんだが」
「はあ」
 そう言い当てられてよつきは困惑した。やはり彼女に隠し事は無理かと再確認する。だが彼だってどうしたらいいかわからないのだ。戦闘は終わって、少しずつでも周りは復興への道を歩み始めていて、それなのに自分は取り残されている気がしているだなんて。
「そうだ、フライングが今頑張ってるって聞いたが本当か?」
「え? ああ、ラフト先輩たちですか。ええ、話に聞くところによると神や魔族の励まし側に回ってるらしいですよ。ほら、あの人たち楽天的だし相手が元神でも元魔族でも気にしませんから。あーそうそう、ローライン先輩も手伝ってるみたいですね」
「なんだか先行き不安になる面子だなあ」
 けれども言葉に詰まるよつきにかわって、レーナはすぐに話題を変えた。そんな些細な心づかいが嬉しくて彼はくすりと小さく笑う。彼女のそういうところは変わらない。それが気を感じられるおかげなのか彼女だからなのかは定かではないが。
「われはな、よつき」
「はい?」
「別にこれで全ての問題が解決したと思ってはいないんだ。たぶん大きな戦争はしばらくないだろうけど、それも今のうちだけかもしれないし」
 しかし続く彼女の囁くような声に、彼は息を呑んだ。
 悲しみは繰り返されなかったが、侵した過ちが消えたわけではない。今後も問題は山積みだった。最大の危機を乗り越えただけで、もっとも危惧していた危機が去っただけで、全てが丸く収まったわけではないのだ。
「でもそれでいいと思うんだ。変わらない世界というのはない。この世界は未熟だからこそ存在している。いや、生きているということは完全じゃないってことなんだ。完全はつまり無で、それはあの海に帰ることと同じだ。だからお前が悩んでるのも正しいし、リンたちが前向きなのもそれはそれで正しいと思う」
 彼女はそっとカップに口を付けた。やや冷めただろう紅茶を飲みながら、幸せそうに目を細める。
「よつきは誰と一緒にいたい?」
「……え?」
「誰が傍にいれば幸せだと思う? たぶんそんな簡単なことでいいんだよ。そこで幸せ感じて、あとは悩んで考えていればいいんだ。周りも変わっていくし知らない間に自分も変わっていくから。時間はないかもしれないけれど、それでも変化するから」
 だから恐れないでと、彼女は言った。今までのは古の鎖に縛られた、消えた歴史を担う者たちによる物語。けれどもこれからは違う、これからは今を生きる人間たちの物語で、そして彼らはもうその人間になったのだから。彼女たちとは違う時の流れを生きる、人間へとなったのだから。
「じゃあレーナさんは、どうするですか?」
 よつきははっとして問いかけた。彼女は過去に取り残されてしまった。彼女たち五人だけが古の鎖に縛られたままで、そこから逃れることができなかった。よつきたちは解放されたのに、同時にそれは彼女たちへとんでもないものを押しつける結果となった。
「われはな、見守ろうと思う。そしてな、繰り返さないようにするんだ。きっとあの海はまたいつか新たな存在を生み出すだろう。気まぐれにディーファが生まれたように、気まぐれな波紋が新たな存在を生み出すだろう。その時、その彼か彼女かが寂しくないように、孤独に飲み込まれないようにするのがわれの仕事なんだ。きっとそのためにわれの力は残ったんだ。今は、そう思う」
 けれども彼女はそう答えて嬉しそうに笑っていた。罪滅ぼしができるのが嬉しいとでも言いたげに、カップの底を見つめながら瞳を細めていた。
「本当に、それでいいんですか?」
「われ一人じゃないしな、今度は。だから大丈夫。アースたちがいればわれはもう大丈夫だよ。アースたちが傍にいるのに幸せじゃないなんて、そんなわけはない」
 そう告げる彼女は本当に幸せそうだった。一段と強くなったなと彼は思う。言えば彼女は否定するだろう、自分は弱いと。しかし彼女は壊れやすくて繊細だが強いのだ。矛盾しているが真実で、それはきっと誰もが肯定してくれる。
「そうだ、われ思ったんだが」
「何ですか?」
「ディーファのこと。なんでディーファはダークたちを蘇らせたかって、ずっと考えてたんだ」
 だが突然の話題によつきは言葉を失った。あの時壊れかけていた彼女を思い起こせば、そんな話が出るとは思ってもみなかった。それでも彼女はリンたちの様子を時折見ながら、穏やかに口の端を上げている。
「罪滅ぼしのつもりだったんじゃないかな、あれは」
「罪……滅ぼし?」
「あいつも不器用だったからさ。かまって欲しくて、それなのに甘え方がわからない子どもみたいで。我々は赤ん坊のようなものだったからさ。だから彼にはそれしか思い浮かばなかったんだ。自分が奪った命を返すことしか」
 レーナの横顔を見ながらよつきは考えた。それが真実なのか確かめる術はない。きっとディーファはあの温かい海に抱かれて眠っているのだろう。彼を呼び起こして聞くことはできないから、それはこのまま永遠の謎だ。
「そうかもしれませんね」
 けれども彼はそう答えていた。わからないならばいい方へと考える方がいい。そう、結局はダークたちも無事生きていて、今は皆に囲まれているのだから。悪いことは何一つないのだから。乗り越えてしまったのだからいい方へと考える方が気持ちが楽になる。未来のためになる。
「ちょっと二人で話し込んでないでさ、私たちにもかまってよ」
 するとそれまでジュリと話し込んでいたリンが、口を尖らせてそう言った。その隣ではジュリが控えめに笑い声をもらしている。アースに言いつけるぞと言わんげな様子だ。
「いや、仲間はずれにされてたものですからね。寂しいなあと思いまして」
 彼はそう答えて手をひらひらとさせた。またまたーというリンのからかう声は、さりげなく聞き流しておく。
「レーナさん」
「ん?」
 去ろうとするレーナの背中を、慌ててよつきは呼び止めた。振り返った彼女は小首を傾げ、続きを促すように瞳を瞬かせる。
「ありがとうございます」
「ん? あー、こちらこそ」
 よつきは軽く手を挙げると、もう一方の手を冷めきった紅茶へと伸ばした。そしてもうすぐメユリの勉強をみる時間だったなと思い出しながら、そっとカップに口づける。
 今こうしていることが、何だか急に幸せに感じられてならなかった。
『始まり』の終わりが全ての終わりではないことを、彼は実感していた。

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